製造部 シルク印刷課 工場長(1992年 経験者採用)
創業以来、半世紀以上にわたり、当社のアイデンティティのひとつとして継がれるシルクスクリーン印刷とその熟練の技術を守る「シルク印刷課」工場長。印刷一筋のキャリアのうち、シルク印刷に携わるようになってからは40年以上。その質量が高いプリンターとしてのあゆみに反して、軽やかにシルク印刷の楽しさを伝えてくれた。
時代の波間をゆく
シルク印刷を見つめて
街に「印刷工募集」と記された電柱看板があって、それが当社への入社のきっかけに。奇しくも創業から今日まで、看板印刷を“看板”の一つとして掲げる、当社らしい話でしょう。そんなことも思い起こせば平成も初めの頃にさかのぼりますが、入社前から離れることなく続けているシルク印刷の仕事には、気が付けば40年以上も携わっています。
私が印刷の世界に入ってから間もなくは、まだまだアナログな印刷も主力だった時代で、シルク印刷を取り扱う工場もたくさんありました。生産速度と精度が向上し、シルク印刷が全盛だった時代、そして時代の流れとともにデジタルプリントが台頭し、単色からフルカラーが主流となり、次第にシルク印刷がが縮小していった時代。この2つの時代を見つめてきたなかで、シルク印刷を取り扱う場所というのも、随分と少なくなったことを体感しています。廃業や店じまいにあたり、大切なお客様を当社に託していった、街の職人さんたちの顔も、幾人と思い出されます。
今でこそ経営多角化に取り組み、多種多様な印刷手法とサービス提供のため、その間口を広げる当社ではありますが、グランド印刷の誕生と発展を支えた、アイデンティティであるシルク印刷を「絶やさない」。その思いのもと、今日まで当社ではその技術を継承しています。
「特別のものはない」
当たり前を守る強さ
創業から50年以上、当時から変わることなくお客様からご支持をいただいている当社のシルク印刷事業ですが、
私はそこに決して「特別のものはない」と思っています。
お客様により早く、コストを抑えたご注文のお品を届けるために、フィルム製作から印刷加工までの全工程を内製化していること、大量注文から小ロット、特大サイズなど、あらゆる事情とニーズに応えられるように、デジタルの力を生かした印刷と並行して、職人による手刷りで仕上げる手法も守り続けていること、たくさんのインクを取り扱うため、気を使わなければ汚れがちな工場も、常にきれいに、明るく保つこと。そして何より、目の前の一つひとつのものに真剣に向き合うということ、そして自信を持って届けられるクオリティを求めることを、いつでも忘れないこと。
それは私たちにとって、ごく当たり前のことではありますが、これまでに骨惜しみなく、ひとえに「当たり前」を続けてきたことが、お客様から長らく愛してきていただいた、大切な時間を紡いできたのではないかと思っています。
魅力は「軽やかさ」
楽しい印刷を伝えたい
当社のシルク印刷の長いあゆみをつい、語ってしまうものではありますが、シルク印刷の何よりの魅力は、その鮮やかな美しさに加え、軽やかさにあると思っています。「水と空気以外は何でも印刷できる」と言われているシルク印刷は、例えば「これぐらいだったら、もしかしたらこんなところにプリントできるかもしれない」「出力だけでは出ない不具合に味がある」と、その気軽でぬくもりある質感には「なんだか面白い」、ワクワクと楽しんでいただける素晴らしさがあると思うんです。
デジタルプリントがすっかりと主流となった現代では、見慣れない刷り上がりは新鮮に映るでしょうし、同じ版を使ったとしても1色ずつ色を変えて、さまざまな色を使った印刷も可能ですし、ダイレクトにあらゆるものに刷ることができる手法ですから、現場に版を持ち込んでガラスや壁などに、あるいは衣類にも、好きな場所に思うままに、記しをつけることができます。
「シルク印刷を守りたい、残したい」という思いもさることながら、やっぱり楽しいことですから、今はもっとこの面白さを、皆さんに知ってもらえたらと思っています。まずは気軽に工場に、立ち寄っていただけたら嬉しい限りです。
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